お腹が割れているとことが格好いい、逆にお腹がぽっこりしていると格好悪い、ということで腹筋運動をする人がいます。しかし、その腹筋運動、本当にあなたの役に立つのでしょうか?腹筋運動とはどんな運動なのか?腹筋運動で使う筋肉が鍛えられると一体どんなことが起こるのでしょうか?腹筋運動によって格好良くしたいというニーズについてはどうでしょうか?考察してみましょう。 |
目次
腹筋運動とはどういう運動なのか
腹筋運動には、
クランチ(crunch)という上半身全体を起こすのではなく、背中を丸めることで肩甲骨を床から浮かせる運動と、
シットアップ(sit-up)という上半身全体を起こすものがあります。
どちらも腹筋と一般に呼ばれているお腹周りの筋肉を鍛えるための運動として知られていますね。直腹筋、外腹斜筋、内腹斜筋、腹横筋などの筋肉が鍛えることができそうです。
しかし、ここでいう「どういう運動なのか」といった時に、重要なのは「どのような関節運動をするものなのか」ということです。
人間の筋骨格系は骨格と筋肉とその他の軟部組織でできています。
筋肉が、骨格にくっついていて、その筋肉が骨格を引っ張ることで関節を動かして体を動かしているのです。
私達が歩く、走る、投げる、跳ぶ、蹴るという動作のために必要なのはこの関節運動であって、筋肉はあくまでその道具に過ぎません。
そういう見方で、この腹筋運動がどの関節を動かしている運動なのかを見てみましょう。
関節運動の観点から見ると、
クランチ(crunch)とは、胸椎と腰椎を屈曲させる運動です。
シットアップ(sit-up)とは、胸椎と腰椎に加えて、股関節を屈曲させる運動です。
それは、胸椎を腰椎を屈曲させるといわゆる「背中を丸めた姿勢」になります。さらに、そこに股関節を屈曲させると「胎児のように体を丸めた姿勢」になります。どちらにせよ、体を丸めるという関節運動なのです。
体を丸める関節運動である、腹筋運動ですが、そのための筋肉を鍛えるということは、「体を丸める能力を高める」ということです。それらの筋肉を鍛えることで「より強い力で」かつ「より素早く」体を丸めることができるようになるわけです。
それでは、その体を丸める能力を高めることでどういう影響があるのでしょうか?見ていきましょう。
腹筋運動で筋肉を鍛えると何が起こるのか
腹筋運動で筋肉を鍛えると、体を丸める能力が高まります。
しかし、実際に人間の活動の中で素早く、力強く体を丸めることが必要になることがあるでしょうか?
もし、空から危険物が跳んでくるようならば、素早く、力強く体を丸める関節運動は役に立つかもしれません。
ですが、正直あまりそういう場面は想定できませんね。腹筋で鍛えた筋肉が役に立つケースはとてもまれなのです。
それだけではありません。腹筋運動で筋肉を鍛えると、体を丸める能力が高まりますが、その能力は自然と体を丸めていってしまうという問題もあります。
それは、人間の老化を早めてしまうのです。
人間の老化は、人間が高さを失っていくプロセスです。高さを失いすぎてしまうと、もう体を支えられなくなり、最後には寝たきりになってしまいます。
年を取ると腰が曲がる、というあります。それは加齢によって腰椎が曲がっていってしまっていると見えがちですが、それより先に胸椎が曲がっていってしまっているのです。
下の図を見て頂くと分かると思います。左の女性から、右に向かって老化が進んでいますが、その中で胸椎が大きく曲がっていっています。
腹筋運動によって、胸椎を屈曲させる力を高まり結果的には老化が進むのです。
もう一つ考えなければならないことがあります。体を丸める能力が高まる、ということは結果的に高さを失うということです。
同じ背丈でも、背筋を伸ばすと体の位置は高くなります。反対に、背中を丸めると体の位置は低くなります。
体の位置が低くなると、身体移動の能力は低くなってしまいます。
なぜなら、人は高い位置から体を倒すことで前や横に進む力を得ているからです。
下の写真は人があるく様子の連続写真です。右から左に向かって歩いていますが、体が倒れながら前に進んでいることがわかります。
体を倒すことで進む力を得るのは歩くだけではありません。下の写真は投げる動作の連続写真ですが、こちらでも体を倒すことで進む力を得ています。
人間の動作には、体を倒して進む力を得るという要素があちこちに組み込まれていて、前や横に進む時に重力を利用して力(トルク)をえているのです。
その時、体を丸める力が高くて、体が丸まってしまうと、高さを得ることができず、歩く、走る、投げる、跳ぶ、蹴るなどの動作をする時に得たい前や横に進む力が弱くなってしまいます。
筋肉をつければ、運動能力が高まると思いがちですが、かならずしもそうではないのです。腹筋運動によって高まるのは「体を丸める能力」だけです。
しかし、それだと腹筋運動には何もいいことがないのでしょうか?実際、6つに腹筋が割れているのは格好いいものです。腹筋運動をしている人のモチベーションのほとんどが、この格好の良さでしょう。格好良くなりたいというニーズについても考えなければならないでしょう。
格好よくなりたいというニーズ
6つに割れた腹筋は格好いいものです。それを手に入れたい、と思うのは自然なことです。しかも、それは努力によって手に入れることができるのです。「筋肉は嘘をつかない」と言いますが、努力は結果になりやすいのが筋トレのいいところです。
しかし、「格好良さ」を決めるのはなにも腹筋だけではない、ということも言えるでしょう。
例えば、背筋が伸びた姿勢は格好いいものです。一方、背中が丸まった姿勢はなんとなくいじけた、もしくはくたびれた印象を与えることがあります。
こればかりは「自分が格好いいと思える格好を手に入れる」べきでしょう。
結論:腹筋運動は必要か
腹筋はとても重要な筋肉です。
- 排便を助ける
- 重量物を持ち上げる際、腹圧を高めて腰椎と胸椎を伸展させて脊柱を保護する
- 外力による内臓の保護
- 片脚支持バランスの安定性を高める
等々、腹直筋・腹斜筋・腹横筋に代表される腹筋群は我々が生きていく上では必要不可欠と言えます。
しかし、読者の皆さんには身体を丸める一般的な腹筋の”鍛え方”を一考していただきたいのです。
腹筋運動とは体を丸める能力を高めるトレーニングです。そのトレーニングによって体を丸める能力が高まってもその能力が実際に活かされるケースはほとんどありません。
それどころか、背中が丸まってしまうことで老化が進んだり、身体移動の能力が下がってしまうことすら考えられます。
ロコムーブは身体移動の能力を高め、老化を防ぎ、ケガを防止するための運動学習プログラムです。
ロコムーブの運動プログラムの実践過程で結果として腹筋群が適切に使われます。
そのロコムーブの立場からは全くもって腹筋運動はおすすめいたしません。
しかし、6つに割れた腹筋に魅力を感じる方もいらっしゃるし、
やはり「自分が格好いいと思える格好を手に入れる」というのがよいと思います。
毎日ロコムーブをするのに便利なスマホアプリ「毎日ロコムーブ」を配信しています。
日替わりで2種目づつ解説動画を見ながらロコムーブが練習できます。
現在はAndroid版だけ配信しています。iOS版についてはもう少しお待ち下さい。