ダイエットや運動不足解消ために、大きく腕を振って歩く人がいます。大きく腕を振ると力強い感じがするし、実際体も温まります。しかし、大きく手を振って歩くのには体幹部に捻れの力が生まれ、腰椎すべり症などの危険があります。それではどのように歩けばよいのでしょう。 |
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人間はなぜ歩く時に腕を振るのか
人は腕を前後に振って歩きます。そもそも、それはなぜなのでしょうか?
それについては研究がありまして、その方が効率よく歩けるのだそうです。腕を振って歩く歩き方だと、腕を固定して歩く時と比べて、エネルギー効率は12%もよくなっているそうです。
この研究では、腕の振りが脚の角運動を相殺することで垂直方向の重心位置の動きを抑制できるからだろうと述べています。
Dynamic arm swinging in human walking(英語)
腕を大きく振ると何が起こるのか
このように腕を振って歩くのは重心位置の上下動を抑制できるからなのだそうですが、この腕の振りが大きくなると、別のことが起こります。
腕の振りが大きくなると、腰椎に捻じれのストレスがかかるのです。
先程の腕の角運動が脚の角運動を相殺して上下動が抑えられるというのは、人間を真横から見たとき(矢状面)の話です。人間を地面と水平な面で切り取ると(水平面)また別の見方ができます。
歩いている時、骨盤は地面についている脚の方が後ろに、地面から浮いている脚の方が前に出ます。地面についている方の脚で体の重心を前に押すためです。
一方、上半身は腕の振りのために逆の方向に回転します。そのため、その中間にある腰椎がその逆の回転の力にさらされます。腰椎は構造上、水平に回る稼動域はありません。
あまりに大きな捻りのストレスにさらされると、腰椎の椎体と椎弓が分離してしまい、腰椎の関節がずれてしまいます。それがすべり症です。
先の研究にもあるように、腕は力を加えて振らずとも歩いていれば自然に振れてしまいます。腕の振りは最小限でよく、大きく腕を振るのは腰椎すべり症のリスクを大きくしてしまいます。
どのように歩くのが理想か
それではどのように歩くのが理想なのでしょうか?
歩くということは転倒するという動きを内に含んでいます。歩くときに体が前に出る力は脚で地面を蹴って得るものではありません。体が前に倒れることで前に進む力を得ています。それは、一本の棒が倒れるように前に出るものです。
そうであれば、その一本の棒は長いほうが倒れる時により長い距離を稼げるはずです。体自体の長さは決まっていますが、その体全体を一本の棒のように使って長さを稼ぐことができます。一着地ごとの距離を稼げると歩行の効率は高まります。
歩行の効率を高めることは重要です。効率の悪い歩き方はかならず体のどこかの組織に負荷をかけています。ケガの原因になったり、老化を早めるからです。
ロコムーブの運動学習が進むと自然と体全体を長く使って効率的に前に進む力を得ることができるようになります。
ここで腕を大きく振ってしまっては、体全体を一本の棒のように使って距離を稼ぐことができず、体のパーツにバラバラな方向の力をもたせることになります。
結論:大きく腕を振って腕を振って歩いてはいけないのか
ロコムーブの立場では、大きく腕を振って歩くことはおすすめしません。
骨盤と上肢の回転が逆方向に強調されるので腰椎すべり症のリスクが高まりますし、位置エネルギーを運動エネルギーに転換する際にも非効率になる要因になるからです。
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