運動の前の準備運動としてアキレス腱のストレッチ運動があります。アキレス腱の断裂を避けるために広く行われていますが、実際、意味のある運動なのでしょうか?この記事ではそれを検証していきます。

目次


アキレス腱ストレッチの意味は?

 

アキレス腱のストレッチというと皆さん、あの運動を思い出されると思います。脚を前後に開いて後ろの脚の踵を地面につけて、ふくらはぎを伸ばすあの動きです。アキレス腱のストレッチと言いながら、その実、ふくらはぎの筋肉である腓腹筋とヒラメ筋のストレッチ運動です。腱は軟部組織の中では硬い組織で、ふくらはぎを伸ばすとより柔らかい腓腹筋とヒラメ筋が伸ばされます。

アキレス腱はふくらはぎの筋肉である腓腹筋とヒラメ筋の両方を踵の骨に接続する腱です。コラーゲン線維からできていて、加齢によって柔軟性が失われます。そして、細かい傷がつきます。するとアキレス腱炎として腫れや痛みを感じます。そのような時には休むことが大切です。アイシングなどのケアも有効ですが、病院に行くのがいいでしょう。そのような炎症がある状態でアキレス腱に負荷をかけると断裂するのです。

アキレス腱は伸ばしたからといって柔軟性が向上するわけではありません。なので、アキレス腱を伸ばそうとすることそのものには意味はありません。

 


ふくらはぎの筋肉を伸ばす意味はあるのか?

 

アキレス腱のストレッチ運動だと思って伸ばしているのはふくらはぎの筋肉(腓腹筋とヒラメ筋)だとして、そのふくらはぎの筋肉を伸ばす意味はあるのでしょうか?腓腹筋もヒラメ筋もどちらもアキレス腱を通じて踵の骨についています。どちらも足首の関節を動かしてつま先を下に向ける動きを生み出す筋肉です。ヒラメ筋は膝関節の下に始まっているので純粋に足首の関節だけを動かすのに対して、腓腹筋は膝関節の上で始まっているので、同時に膝関節を曲げる動きを生み出します。腓腹筋とヒラメ筋に共通しているのは、足首の関節を動かしてつま先を下に向ける働きです。

逆に足首の関節を中心につま先を上に上げようとするとこれらの筋肉はストレッチされます。

すなわち、この2つの筋肉をストレッチするということは、足首の関節を中心につま先を上に上げる際の柔軟性を高めようとすることです。

ここで疑問になるのは、そんなにつま先を上に持ち上げるための柔軟性が必要なのかということです。

歩く、走る、跳ぶ、といった身体移動での足首の関節の働きを考えてみましょう。

空中に浮いている足が地面に着くところから見ていきます。空中に浮いている足が地面に着くときには、踵から着くことが理想です。踵から着地することで踵を中心に脚全体に回転の力が加わり、失われた重心位置の高さを回復するための力になるからです。この働きをヒールロッカーと呼びます。

空中に浮いている足が着地するとき、踵から着地するためには、足首の関節を中心につま先を少し上に上げる必要があります。この時に、腓腹筋とヒラメ筋の柔軟性が必要になりますが、実際につま先を上げるのはほんの少しで十分なのです。アキレス腱伸ばしのような動作から得られる大幅なストレッチは必要ないのです。

そして、地面についた脚は接地している足を中心に前に倒れていくことで、重心を前に押し出して行きます。その時、足首の関節を中心につま先は下の方へ向けられます。脚全体の長さを稼ぐためです。この時、ふくらはぎの筋肉である腓腹筋とヒラメ筋は活動します(すなわち縮みます)。

結局のところ、身体移動の必要性を考えると、ふくらはぎの筋肉の柔軟性は踵で着地するためにちょっと伸びる柔軟性があれば十分なのです。アキレス腱伸ばしのような動作で得られる大幅なストレッチは必要ありません。

 


結論:アキレス腱のストレッチはいらない

 

筋骨格系は自分の重さを支え、身体移動を行うためにあるものと考えるのが、ロコムーブの考え方です。アキレス腱も、ふくらはぎの筋肉もそのための道具に過ぎません。その観点から言うと、アキレス腱やふくらはぎの筋肉のストレッチは身体移動に寄与するところがなく、不要な準備運動ということになります。

 

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カテゴリー: 準備運動